いわて短角牛とは
東北生まれの「和牛」品種
「日本短角種」は、「和牛」と呼ばれる品種の1つで、唯一東北地方から発生したものです。
旧南部藩領(南部氏が治めた領地)において農耕・運搬用の役畜であった『南部牛』に、『ショートホーン種』等の海外品種を掛け合わせたことが、品種成立の端緒とされています。
生産頭数日本一
「日本短角種」は、北東北及び北海道を中心に全国で約7,000頭が飼養されていますが、そのうちおよそ4割が岩手県内で飼養されており、本県が日本一の産地となっています。
「いわて短角牛」は、県北地域を中心に生産され、澄んだ空気と水、豊富な牧草に恵まれた広大な草原でのびのびと育てられています。
希少な国産赤身肉
全国の肉用牛頭数に占める日本短角種のシェアは0.5%以下。非常に希少な牛肉です。
高齢化や後継者不足により生産頭数の減少が続き、益々希少さが増している国産の赤身牛肉。
是非、ご賞味ください。
※和牛とは…
日本国内で品種改良され、日本固有の品種として認定された「黒毛和種」「褐毛和種」「無角和種」「日本短角種」の4品種及びこれらの交雑種を指す。
日本短角種の誕生
明治になると海外品種の導入が始まり、在来牛との交配が開始されました。
名牛の産地と言われていた本県岩泉町で、南部牛にアメリカ産ショートホーン種を交配したことが南部牛改良の始まりと言われています。
その後もホルスタイン種やエアシャー種等の外国種が次々と導入されたものの、放牧適性のあるショートホーン種が北上山地の厳しい飼養条件に合ったことから、ショートホーン種を中心とした交配が進められました。
昭和初期に和牛改良の要望が高まり、東北地域で飼養されていた短角系種のうち役肉用に適したものを標準体型として、昭和32年に日本短角種登録協会が設立。
「日本短角種」としての品種登録がはじまりました。
いわて短角牛の生産
夏山冬里方式
いわて短角牛のもととなる子牛は、【夏山冬里方式】と呼ばれる生産方式により生産されます。
【夏山】
放牧地の雪が溶けると、冬の間に生まれた子牛たちは、母牛とともに放牧されます(開牧・山あげ)。放牧された子牛は母牛の母乳を飲み、徐々に生草を食べ始め、すくすくと育ちます。
1牧区につき50~60頭程度の母牛の群れの中には種雄牛が1頭放牧され(まき牛)、自然交配が行われます。母牛は子牛に授乳をしつつ、自然交配により、また新たな子を宿します。
出来る限り自然のままに。広大な放牧地でストレスなく健康に過ごしています。
【冬里】
冬の訪れを前に、母子は放牧地を去り、里に帰ります(退牧・山下げ)。子牛は家畜市場で販売されて肥育農家のもとへ、母牛は牛舎にて分娩に向け準備をします。3月前後に新たな子牛を分娩し、また、山の雪解けを待ちます。
肥育管理
子牛は、肥育農家のもと、牛舎で肥育牛としての管理がなされます。
地域で生産された乾草やワラ、トウモロコシサイレージといった粗飼料や、穀物主体の濃厚飼料を与えます。
ほとんどの場合、黒毛和牛は生後30カ月齢程度で出荷されますが、自然交配で誕生時期が集中するいわて短角牛は、通年で牛肉を供給するため出荷時期による調整を行います。
出荷月齢の違いから、時期により異なる旨味を感じるかもしれません。自然交配という生産方法から生じる「短角ならでは」の味わいです。
南部牛とは
日本短角種のルーツである「南部牛」の成立には諸説ありますが、平安時代以降の中世期には、すでに県内でも牛馬が飼養されていた痕跡が見付かっています。
「南部牛」とは、南部藩領(南部氏が治めた盛岡藩及び八戸藩)で役畜として飼養されていた在来の牛を指します。四肢が短く足腰が丈夫で、かつ背中が平坦で荷が載せやすく、また粗食に耐え従順であること等から、農耕・運搬に適した牛として活躍していました。
当時、内陸の米穀と沿岸の海産物や塩の交換は重要な交易となっており、奥羽山脈や北上高地を越える荷役の運搬手段として、南部牛が使われました。その交易路は「塩の道」と呼ばれ、現代にも様々な痕跡を残しています。
牛は馬と比べて足は遅いですが、大きな荷物を背負っていても、足場の悪い山道をしっかりと踏ん張って進むことが出来ます。また、文字通り「道草を食って」くれるので、道中の餌にも困らず、重宝したそうです。
運搬に従事した牛方(うしかた)は、1人で6頭前後の群れを引き連れていったそうで、その一群を「一端綱(ひとはづな)」と呼びます。運搬のスピードが求められるにつれ牛方は徐々に減少し、昭和30年代には姿を消してしまいました。
- 野田の牛方像(道の駅のだ)
- 奥清水のベコ泊り場
- 撫でベコ
現代に残る南部牛の名残
平庭闘牛大会
久慈市山形町で毎年開催される、東北唯一の闘牛大会。牛は、群れの中で順位をつけ、順位が上の牛には逆らわない性質があります。塩の道の「一端綱」の先頭となる統率牛を決める際にも、牛同士の突き合わせを行っており、それが闘牛の始まりとされています。
南部牛追唄全国大会
岩泉町で毎年開催される、「南部牛追唄」の全国大会。荷物の運搬や、放牧牛を内陸のセリ場まで追っていく道中で歌い継がれた牛追い唄(牛方節)。現代の民謡愛好家が自慢の唄を競い合います。
塩の道
三陸沿岸部と内陸部を結ぶ交易路であった塩の道には、「白石峠の一里塚」や「関御番所跡」、「奥清水のベコ泊まり場」といった部分に、当時の面影を垣間見ることが出来ます。城下町盛岡市内でも、「寺町通り塩の道碑」として塩の道の痕跡が残されています。
ヘルシーで肉の旨みが味わえる赤身肉
旨さの秘密はアミノ酸
「いわて短角牛」は、脂肪分が少ない赤身の高タンパク牛肉です。
黒毛和牛より脂肪分が少なくヘルシーで、かつ旨味のもととなるアミノ酸をたっぷり含み、噛むほどに美味しさが広がります。
低利用部位ほど栄養豊富
近年の研究では、タウリンのほか、亜鉛や鉄といったミネラル分が、サーロインよりもウデやスネといった部位に多く含まれることが分かっています。
いわて短角牛の取扱い店舗
関連資料・動画
いわて短角牛の郷【制作者:いわて牛普及推進協議会】
「いわて短角牛」を識る 【制作者:岩手県(流通課)】
雄大な牧野での放牧風景等のほか、短角牛肉の魅力、またモモやランプ等の部位の活かし方についてご紹介します。
「短角牛のおいしい食べ方」 【制作者:岩手県(県北広域振興局農政部)】
スライスからステーキまで、ご家庭のフライパンでのおいしい食べ方(焼き方)についてご紹介します。
[いわて短角牛×シェフ]絶品オリジナルメニュー
① ジュレド・ブッフ・タンカク
【開発者:メツゲライクスダ】
- 材料
- 短角牛スネ肉、西洋ネギ、塩・胡椒、ローリエ
- レシピ
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- 短角牛のスネ肉の必要ないスジと脂を取り除き、ソミュール液に一週間漬け込み、塩漬けにする。
- 塩漬けにした肉と胡椒、ローリエを入れて水から柔らかくなるまで煮る。
- 肉を引き上げ、アクを取りながら煮汁を煮詰める。
- 西洋ネギを高温でこんがり焼く。
- 器にカットしたスネ肉を敷き、その上にポワローを重ねるのを2回繰りかえす。
- 煮詰めた肉汁を注ぎ入れ冷蔵庫に入れ、肉汁がゼリー状に固まるまで冷やす。
- 開発者コメント
- 塩水に6日間漬けて熟成させたことで、スネ肉の濃い味わいが前面に出てくる。柔らかくほぐれるスネ肉の食感が心地よく、甘やかな香りの安曇野産のポワロー葱との相性もすばらしい。
② リエット・ド・フュメ・タンカク
【開発者:メツゲライクスダ】
- 材料
- 短角牛ブリスケ、お塩、胡椒、ローリエ
- レシピ
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- ブリスケのスジと軟らかすぎる脂を取り除き、肉と脂を分ける。ソミュール液に3日間肉と脂を漬け込み、塩漬けに。
- ソミュール液から肉を引き上げたら、燻製にかける。
- 鍋で脂身を加熱し、脂が十分に溶け出させる。香りが上がってきたら肉を入れ、表面を焼く。
- 肉に脂がかぶるくらいになったら塩と、お好みのスパイスを投入し、6時間ほど弱火で煮込む。肉がほぐれるくらいで火を止める。
- 油脂分と肉を分ける。肉は繊維状にほぐし、脂と均等に混ぜ、冷蔵庫で冷やし完成。
- 開発者コメント
- 飲食店では使い道が無いといわれるブリスケの脂を活かしリエットに。粗飼料をたっぷり食べた短角の脂は香りがよい。燻製にすると風味がよくなり、長保ちもします。風味あるパンドカンパーニュにのせて食べて下さい。
③ 岩手県産短角牛のBBQチェダービーフボウル
【開発者:No Code 米澤文雄】
- 材料
- バラ肉薄切り、タマネギ、マッシュルーム、バーベキューソース、チーズ、生クリーム、スモークパプリカパウダー
- レシピ
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- スライスしたタマネギとマッシュルームをオイルで炒めたところにバラ肉スライスを投入して炒め、火を通す。
- バーベキューソース(市販のものでもよいし、ケチャップ、三温糖、酢、ニンニク、トウガラシペーストなどで自作してもよい)を加えて肉が柔らかくなるまで煮込む。
- ごはんの上にお肉を乗せ、チーズと生クリームを合わせたチェダーソースをかける。スモークパプリカパウダーをふりかけてできあがり。
- 開発者コメント
- ライスの上に甘辛味のBBQソースとバラ肉スライスをからめたものをドッサリ乗せ、そこにトロトロのチェダーチーズをかけました。NY版の焼肉丼という感じですから、日本人でも嫌いな人はいない味だと思います。
④ 岩手県産短角牛のパストラミオーバーライス
【開発者:No Code 米澤文雄】
- 材料
- 短角牛ブリスケ、塩、胡椒、お好みのスパイス、卵、タマネギ、ピクルス
- レシピ
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- ブリスケに塩、胡椒、好みのスパイスをまぶして2日間マリネする。
- 95度の低温に設定したオーブンで一晩加熱する。柔らかく焼き上がったら一晩冷蔵庫で冷やし込む。
- 肉の表面にマスタードとお好みのスパイスをまぶす。
- ブリスケをヒッコリーなどのチップで30分ほど燻製し、香りをつける。
- カットしたパストラミの表面を軽く焼き、ごはんに盛りつける。
- 焼いた玉ねぎ、ピクルス、目玉焼きを乗せて完成。
- 開発者コメント
- ニューヨーカーが大好きなパストラミを短角牛でつくると、とても味わいの濃いものができた。塩漬けして、火入れをした後に、しっかりスモークをかけてパンチを出すのがポイントです。